辞典の魅力!【じてん・の・みりょく・!】
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辞書はどんな時に引きますか
一つは、読むときです。文章に意味のわからない言葉が出てきたときに辞書を引き、どんな意味かを調べます。このときに引くのが国語辞典です。また、漢字がわからないときは、漢字辞典を使うと知りたい語の意味にたどり着けるでしょう。言葉の意味を調べるときは、国語辞典と漢字辞典の併用が基本です。
もう一つは、書くときです。書きたいことを表す適当な言葉が思いつかないとき、類語辞典が便利です。似たような意味の言葉を手がかりに、自分が探していた言葉に出逢えるからです。また、自分が考えた言葉が正しいか確信が持てないときも、辞書を見て確認します。このときは国語辞典が重宝するでしょう。
しかし、辞書を引く第三のときがあるのをご存じでしょうか。それは遊ぶときです。遊ぶときに引く辞書は紙が一番です。スマホの辞書アプリは便利なのですが、ピンポイントで示されるので「遊び」がありません。紙の辞書は一見余計に見える情報もありますし、ページをめくるさいにたくさんの言葉が目に飛びこんできます。これが「遊び」です。
辞書に「遊び」があると、辞書で遊べます。たとえば、語釈(語の意味)を使って見出し語(元の言葉)を当てる辞書クイズを子どもとやった人は少なくないでしょう。応用版の「逆からブランチ」は大人も楽しめます。辞書のなかから多数の意味を持つ多義語を選び、多義語の語釈を後ろから一つずつ出し、見出し語が何かを当てるゲームです。多義語の語釈は後になるほど中心的な意味から遠ざかり、派生的な意味になるので、なかなか難しいです。さらに難度が高いのが「たほいや」です。でたらめに開けたページに載っていた難しい言葉を選び、それに偽の語釈をいくつかつけ、そのなかから本物の語釈を当てるゲームで、高度な心理戦になります。
辞書は、遊びながら語彙力が自然と身につく本です。そんなすてきな本を本棚の飾りにしておくのはもったいない。そう思いませんか。
2021年4月5日
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石黒圭
1969年大阪府高槻市生まれ。国立国語研究所教授・研究情報発信センター長、一橋大学大学院連携教授。一橋大学社会学部卒業、早稲田大学大学院文学研究科修了。博士(文学)。専門は日本語学・日本語教育学。文化庁文化審議会国語分科会委員。小学館『例解学習国語辞典第11版』編集委員、光村図書『小学校国語』教科書編集委員。主著に『文章は接続詞で決まる』〈光文社〉、『リモートワークの日本語』〈小学館〉ほか多数。