辞典の魅力!【じてん・の・みりょく・!】

  • 辞書の魅力を引き出す「辞書引き学習」を世界へ

    日本の子供たちは、辞書の使い方を小学校3年生の国語の授業で習います。文部科学省が学習指導要領で、そのように決めているからです。文部科学省は、辞書の引き方を教えれば、辞書を引けるようになるかもしれませんが、残念ながら、辞書の引き方が分かったとしても、言葉は豊かになりません。言葉の使い方は改善されません。最も、現在の辞書の引き方の指導は、「言葉を豊かにすること」を目的とはしておらず、以下のように、目標に応じて情報を得るという「レファレンス」としての位置づけが与えられています。

    辞書や事典の使い方を理解し使うことは,情報化社会において必要な情報を収集したり,語彙を豊かにしたりするために必要な「知識及び技能」である。(著者中略)辞書や事典については,調べる学習などにおいて活用できるようにすることが求められ,国語科に限らず,他の教科等の調べる学習や日常生活の中でも積極的に利用できるようにすることが大切である。 (平成29・30年小学校学習指導要領解説(国語編)より引用)

    私は25年程前から「辞書引き学習」を考案し、紹介してきています。「辞書引き学習」は、従来の辞典指導で行われている、「知らない言葉」を調べるために、調べる方法を教えるのではありません。「知っている言葉」を辞書から読み取らせることで、「知っている」という認識を揺さぶることで、言葉の面白さや言葉を正しく使うことの大切さに気付かせる学び方です。この学び方は、全国の小学校に広がり、すっかりお馴染みになりました。

    私たちの研究チームでは、第一言語教育(日本語、英語)だけでなく、第二言語教育(英語、中国語)にまでこの方法を国内外の教育現場に紹介し、その効果を検証しています。

    辞書を読んで知っている言葉に出合う活動は、一目で沢山の言葉に触れられる紙の辞典の方が取り組みやすいと思いますが、タブレット等の端末でも、紙の辞書の良さを活かしたアプリケーションの開発を行っていきたいと思っています。紙の辞書の良さを再認識し、引言葉の学習の現場で活用されることを願っています。

    2021年3月15日

  • 中部大学 教授、博士 深谷圭助

    深谷圭助

    中部大学現代教育学研究所所長、NPO法人こども・ことば研究所理事長
    愛知教育大学卒、名古屋大学大学院博士課程教育発達科学研究科満期退学
    「辞書引き学習」開発者